こんにちは。事務局スタッフの太田智子です。
今、風疹の流行が大問題となっています。マドレボニータでも「ストップ風疹プロジェクト」に参加し、赤ちゃんの「先天性風疹症候群」をなくすため、流行を終息するための取り組みをスタートしました。
→詳しくは公式サイトをご覧ください
そこで、今日は私太田がパーソナリティを務める地元西東京市のコミュニティFMの番組「FM西東京 kirakira☆アヴェニュー」で放送しました、風疹の流行と対策についてのインタビューをご紹介します。
(私の個人ブログからのコピーです)
公衆衛生学がご専門の産婦人科の先生に、今回の流行について基本的なことからがっつりお伺いしました。
ラジオでお話いただいた内容を、ほぼそのまま書き起こしましたので、長いです。
でも、ものすごくわかりやすいと個人ブログでも好評いただいた記事となっています。
他の人にも知ってほしいと思ったら、よろしければこの記事をお勧めくださいね。
ゲストの太田寛先生にはこの書き起こしの原稿の確認や加筆にもご協力いただきました。太田先生、本当にありがとうございます。
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ゲスト:
太田 寛(おおた ひろし)先生
慈桜会 瀬戸病院 産婦人科医師/北里大学 医学部 公衆衛生学 助教
1989年京都大学工学部電気工学科卒業後、日本航空株式会社羽田整備工場に勤務。2000年東京医科歯科大学卒業。茅ヶ崎徳洲会総合病院産婦人科、日本赤十字社医療センター産婦人科勤務を経て、2009年北里大学医学部公衆衛生学助教に。2012年瀬戸病院産婦人科勤務、現在に至る。平成21年度厚労科研費補助金「新型インフルエンザ対策(A/H1N1)妊娠中や授乳中の人へ」パンフレット作成委員。日本医師会認定産業医、日本産科婦人科学会専門医。
――まず、風疹とはどういう病気なのでしょうか?
一言で言えば、体にぶつぶつが出る病気ですね。みなさんは子どものときにかかって、終わってしまっている病気と思うかもしれないんですけど、そう簡単な話ではありません。まず、うつりかたは「飛沫感染」といって、インフルエンザと同じですね。つばとか、そういうのでうつる。患者のくしゃみの中のつばを吸い込んでしまったり、つばが手にくっついたりして、顔、目、鼻を通してうつるようなうつり方です。2〜3週間くらい潜伏期間があって、ぶつぶつが顔と体に最初に出て、数日で手足に広がって、3〜4日ぶつぶつが出て、長くて1週間くらい出る人もいますけれども、その程度で治っていく。だから、別名「三日ばしか」とも呼ばれています。病気自体は比較的軽くて、重い病気にはなりにくいです。数千人にひとりくらい(重く)なることはありますけど、だいたい軽く終わります。
昔は子どもが友だち同士でうつって…ということもあったんですが、今はワクチンが非常によくなって、かつみんなが打つようになったので、お子さんの患者はかなり少ないですね。今のお子さんはMRワクチン(風しん麻しんワクチン)というのを1歳のときと、小学校入学前の2回打っているはずですね。そこで2回打っていれば、ほぼかからないので、子どもたちにあまり患者はいない、ということです。
――今回の流行ですが、なぜ今ここにきて流行っているのでしょうか?
ワクチンを打っていない大人が大勢いるから、です。さっき、軽い病気だと言ったのに、何でこんなに何度も何度もテレビニュースでも流れるかというと、これはもともと軽い病気なんだけど、妊婦さんにうつると、うまれた赤ちゃんに障がいを残すことがあることが大きな問題だからです(先天性風疹症候群)。妊娠の初期に、もしそのお母さんに免疫がなくてですね、風疹にかかるとそれがお腹の赤ちゃんにうつってしまって、妊娠の時期によっては50%~70%くらいの確率で赤ちゃんに障がいが出ると。障がいというのは、具体的に何かというと、うまれたときから白内障で目が見えない、心臓に穴があいてうまれてくる(後で手術をしなければならない)、あとは耳が全く聴こえない状態でうまれてくる、まあそういうものです。
耳が聴こえないということは現代でも治療しようがないんですね。心臓病や白内障は手術をすれば良くなる場合もあります。しかし、赤ちゃんですからね。負担も大きいですよね。と、そういうことが起こるというのが、今問題となっているわけです。病気自体は軽いんですけど、妊婦さんがうつってしまったときの、赤ちゃんへの感染による障がいが問題になっています。
――妊婦さん自身が、流行への対策としてワクチンを打つ、ということはできないというのは本当ですか?
はい、そうですね。風疹のワクチンは「生ワクチン」という、ウイルスを弱くして、それを打つことによってその病気の免疫をつける、というようなシステムのワクチンです。なので、ウイルスが実際に体の中で増えることがあるので、妊娠してしまったら、逆にその「先天性風疹症候群」を誘発してしまう可能性があるので打てない、ということです。
ただし、間違いで妊娠しているのに打ってしまった…という人は世界中にたくさんいるのですが、ひとりもワクチン接種によって先天性風疹症候群というその障がいを起こした子どもはいないので、妊娠してるのにワクチンをうっちゃった、という人はそんなに心配しなくてもいいです。ただ、わざわざ打ってはいけません。
――流行には、季節要因はあるのですか?また今後の流行拡大、または終息の見通しというのはたっているのですか?
普通は春先からはやる病気なんです。なので、これから爆発的に…まあ既に爆発的なんですけど、これからさらに増えるんじゃないか、と恐れている専門家も多いですね。だから…どうやって止めるか、ということですね。で、流行が止まるかどうかということに関しては、今からどれだけの人がワクチンを打ってくれるかによって決まります。
流行を止めるには、人口の95%くらいの人が免疫をもっていれば、次々とうつるという連鎖は止められることがわかっています。だから、以上の人がワクチンを打って、と言っても実はワクチン接種で免疫がつく人は実際には100%ではないので、100%の人がワクチンを打てば、95%以上に免疫がついて、一部免疫がつかない人がいても、隣の人にうつっていかないので、流行は止まる、と。それがいつ達成されるかで、流行が止まります。ワクチンで止めるのか、かかりまくって(結果として免疫がついて)止まるのか。
――現状は何パーセントくらい、という数字は出ているんですか?
大人だと…8割くらい、まあ年代によってちょっと違うんですけど、8割くらいですかね。流行が止まる数値ではないです。このまま対策が進まずにワクチンをうたない人が多いままだと、多くの方が感染して、妊婦さんにもうつって、そうすると赤ちゃんが…その1年後くらいに障がいをもってうまれてくるということです。さっきから問題にしている赤ちゃんの障がいというのは、風疹が去年の秋くらいから流行していて、そこから今(4月8日現在)までに全国で合計8人確認されています。ただし、一番軽い障がいは耳だけ聴こえない、というものなので、今までうまれた赤ちゃんの中で先天性風疹症候群の影響で耳が聴こえない、というのがまだわかっていない場合があるかもしれないんですよ。昔、沖縄ではやったときに、米軍機が飛んでいてもスヤスヤ眠っている子どもがいる、ということでこうした障がいがあることわかった、というような話もあるので…。
【参考】年代別風疹抗体価保有状況
”少なくとも”8人はうまれている、ということです。今実際妊娠を続けている人で、お腹の中の赤ちゃんが多分その障がいをもっているであろう、という方もまだいるはずなので、増えるのは確実です。年間105万人くらい赤ちゃんがうまれるんですけど、その中で「たった8人じゃないか」といわれてしまうと、予防しなくていいじゃないか、という話になってしまいます。そういうことをいう人も、ときどきいますね…。でもまあそこまではいわない人でも、では他の人の赤ちゃんのためにワクチンを打つかといわれればね…打ってほしいですけど、僕はうちますけど、そんなの自分とは関係ない…といわれてしまえば、それまでですよね。
また、中絶という選択をした人は統計には出てきにくいということも、忘れてほしくないです。
――でも、この流行をとめるためには、家族や周囲に妊婦さんがいなくても、「妊娠」ということが身近にないライフステージの人も対策をしなければ、終わらない、ということですよね。
そうですね。今までも、毎年そういう赤ちゃんはひとり、ふたりうまれていたんですけど、去年くらいまでは、その風疹が誰からうつったのかがわかっていたんです。つまり、それほど流行していなかったので、旦那さんがかかっていたとか、同僚がかかってうつったって感染経路がわかっていたんですけど、今年になってからは、どこの誰からうつったのかがわからない風疹をもらって赤ちゃんがそうなった、という例が増えています。つまり、流行しているので、電車のなかでうつったかもしれないし、隣に座った誰かだったかもしれない…というのが増えていて、そう言う意味ではもう、「関係ない」と思っている人も全員がワクチンを打って、かからないようにしてくれないと、そういう赤ちゃんがうまれることは防げない、ということですね。
――では、具体的に免疫をもっている人を増やす方法なんですけれども、もうこれはワクチン接種、ということなんですね?
もうワクチンしかないですね。もともとぶつぶつがでる1週間くらい前から感染力があるとされているので、「かかった人は出歩かない」っていうのは解決になりません。ぶつぶつが出る前は「かかっていても気付けない」んですから、無理ですよね。だから、ぶつぶつ出ちゃったから家にこもっていればいいや、ではだめです。その数日前から接触した人全員に「オレかかったよ」と言いまくって、「ごめんねごめんね」って言わないとだめということですよね。でももちろんそれは難しいですよね。さらに15%から30%くらいの人はぶつぶつも出ません(注:不顕性感染)。だから、ぶつぶつが出ていなくて、ウイルスをまき散らしている人が、たぶんそこかしこにいるかもしれないんですよ…(注:不顕性感染の場合は、感染する力は弱いと考えられていますが、はっきりとはわかっていません)。
――そのように対策が必要とわかったところで、今、自分に免疫があるのか、ワクチンを接種したほうがいいのかわからない、という人も多いと思うんですが、そういった人はどうすればいいのでしょうか?
ワクチンをどういう人が打てばいいか、なんですけど、まず妊娠を考えている女性は当然ですね。妊娠する前に打ちましょう。避妊している人であっても、いつ避妊に失敗して妊娠するかわからないですから、打ってもらいたいです。
次に大事なのが「男」。今、流行の9割が大人と言いましたけど、80%以上は「大人の男」なんですよね。もともと赤ちゃんに影響がでる問題というのはわかっていたので、女の人には、ある程度ーーまあ制度の変更でちょっと差はあるんですけどーー、女の人にはそこそこワクチンを打ってるんですよね。なんですけど、男の人は、妊娠とは関係ないよ、とほったらかしにされていた時代があるんですよ。しかし、男女に打たないと効果がないことがわかったので、今の子どもたちは、男も女も打っています。でも、今大人になっている男の人たちは、十分なワクチンを打ってないんですよ、ずーっと。なので、今かかっている8割方は男で、男ががんがん流行させているので、それが妊婦さんにうつって、そういう赤ちゃんがうまれている、という現実があるんです。
なので、ぜったい男の人の人には打ってもらいたいです。で、その中でも打たなくても良いかな?という人がいます。「確実に2回風疹のワクチンを打った」という記録が母子手帳にあれば、まあうたなくてもいいです。あと、「本当に」昔に風疹にかかったことがあるんだったら、うたなくていいです。「本当に」というのはですね…、親に「おまえ風疹にかかったから大丈夫だよ」といわれているひとは結構いるんですけど、実はその風疹の診断は「ウソ」だったりするんですね。半分くらい違う、というようなデータもあります。「ただちょっとぶつぶつって出た」というのを「あ、これ風疹だよ、たぶん」くらいの診断でやられていたりとか、他に「はしか」もぶつぶつが出るし、「突発性発疹」もぶつぶつが出るので、他のぶつぶつの出る病気と間違えて…まあ別に間違えてもどうせ治っちゃうのでね、(かかったひとの体調という面では)問題ではないんですけど、当時は医師も現在のような問題になると思っていないですから、「まあ風疹だよ」というような診断をやっていたり、親が勘違いしたり、ということがけっこうあるらしいんです。
実際産婦人科の外来でも旦那さんがついてくるのでね、妊婦のだんなさんには絶対にうて、と言うんですけど、「いや、僕昔かかったんですよ」、と言われて、「本当ですか?」ってもう一度聴くと、「いや、たぶん…そう思うんですけど…」みたいなね。だいたいは自分の記憶はない時期のことですしね。中学生くらいにかかったんであれば、やや信用してもいいんですけど…。現代なら採血で本当にそれが風疹かどうかはわかるんですけど、昔はそこまではしなかったので、「絶対かかった」と言い切れない人は、ワクチンを打ってと言ってますね。
しかも、過去にかかっていて、免疫がある人がワクチンを打っても問題は何もないので、一回かかったかどうかあいまいでわからないな、という場合は、うつほう、安全側で考えてほしいですね。 MRワクチンならはしかの予防にもなるし。
――まさにそういった質問が妊婦さんから寄せられています。「夫が抗体があるか不明な場合、抗体があるか検査するのと予防接種であまり値段が変わらない気がするので、抗体のあるなしにかかわらず、いきなり予防接種してしまってもよいのでしょうか?また、妊娠後の検査で風疹の抗体に問題なし、と言われた場合は例え家族や身近な人に風疹が出たとしても、隔離するなどそれ程気をつけなくてもいいんでしょうか?」
まず、旦那さんは、そのままワクチンを打つことを勧めます。もちろん採血して、免疫があるかないかを調べて、なかったらうつ、というのでもいいんですけど、そうするとうつまでにタイムラグが生じてしまうんですよね。会社休んで採血に行って、後日結果を聞きに行って、あ、免疫なかったからうつ、と…免疫があったならいいですけど、そういうことをやっていると、忙しいビジネスマンは下手すると1か月、2か月とのびちゃうんで、それよりは一発バンと打ったほうがいいということで、うつことを勧めています。
それと、妊婦さんが免疫があるといわれたとしても、その「ある」というレベルが実はいろいろなんですよね。すごくある人と、まあある、という人がいるので、やっぱり、身近にそういう感染者がいると、ふってくるウイルス量がとても多いので、もしかしたらその免疫を破ることもあるかもしれないです。なので(感染者は)隔離はしたほうがいいと思いますけどね…。たとえ免疫があっても隣に風疹にかかった夫がいたら嫌でしょう。ただ、赤ちゃんに障がいがでるのは、妊娠の20週くらいまでです。なので、20週をこえていれば、赤ちゃんのそういう大事な部分は作り終わっているので、もうそれ以降は障がいがおこることはないので、そこまで気にしなくていいのかな、と思います。まあ、隔離した方がいいと思いますけど。
――とにかく免疫があるかどうか分からない人はワクチンを打ったほうがいいということですね。
そのとおりです。女性で既に妊娠したことのある方は、今の日本だとほとんど場合、妊娠中に、風疹の免疫があるかどうかの検査をしています。さっきの質問のかたも検査をしていましたよね。(血液検査の)「風疹HI」という項目ですね。この項目が、「16倍」以下、つまり「8倍未満」「8倍」「16倍」という数字だった人は(出産後に)ワクチンをうちましょう、と勧められています。なので、今からまた妊娠をするつもりがあるんでしたら、その項目をもう一回みてもらって、「8倍未満」「8倍」「16倍」の人はワクチンをうつ。「32倍」「64倍」「128倍」…とかはOK、ということになっています。
意外と検査結果のフィードバックで医師がいう「問題ない」が「免疫があるから問題ない」と言ってるんじゃなくて、「(妊娠中の)今は風疹にかかっていないから(今回の妊娠は)問題ない」といってスルーされているときがあるんです。産婦人科の医師といえども、予防に一生懸命じゃないと、「この妊娠が終わればいいじゃない」みたいな感じで検査結果を伝えている場合があります。そうすると「問題ない」の意味合いが違うので、自己防衛のためにはその数字はみてもらいたいな、と思いますね。
――風疹抗体価HIの数値が「8倍未満」「8倍」「16倍」だった方で、出産して今授乳中という場合は、ワクチンを打っても大丈夫ですか?
授乳中でも打って大丈夫です。むしろ、授乳中の方は今妊娠する可能性は低いですし、ワクチン打って2か月は避妊が必要になるんですが、授乳中の方はその期間がとりやすいので、おすすめです。ぜったい打った方がいいです。次の妊娠のときに、風疹にかかって赤ちゃんに障がいが出たという例が、今回の流行でも2例くらいあります。つまり、上のお子さんのときに免疫が低いのがわかっていたのに、ワクチンをうたずに妊娠して、風疹にかかって先天性風疹症候群だったというのが、昨年秋以降に確認されている8例のうち2例がそうだったと思います。
――ワクチン接種後の避妊が必要という話ですけれども、男女ともに、ですか?
男の人は避妊をする期間を設ける必要はありません。男の人はお腹の中に子どもが入ることはないので。女性は、ワクチン接種後2か月間避妊をすること、となっていますね。
――ではワクチンを打とう!と思ったときに、どこでうてるのでしょうか?
だいたいワクチンがあるのは、小児科です。内科でもあるところもあります。婦人科もおいてあるかもしれません。いずれにしても、だいたいの病院は、予約をしてもらうようにしているところが多いです。なぜかというと、ワクチンの在庫がないと(突然来院されても)うてないですし、今希望者も増えているので、ちょっと流通が逼迫していてですね、病院によっては届いていなかったりするんですね。
それと、今流通しているのは「風しん麻しんワクチン(MRワクチン)」という混合ワクチンです。前は風疹の単独ワクチンもあったんですけど、もう在庫がないようです。風しん麻しんワクチンの方が圧倒的に生産量が多くて、今、風疹の単独ワクチンはほとんどなくなっています。麻しんというのは「はしか」です。このMRワクチンなら風疹だけでなく、はしかも予防できます。はしかは、かかること自体がとってもこわい病気です。はしかにかかると赤ちゃんは…1000人に1人くらいは亡くなってしまう、それくらいこわい病気なので、どうせならこの混合ワクチンをと勧めています。それが今10000円くらいですかね、高いので二の足を踏むかもしれませんけど、そういう不安な思いをするよりはいいと思います。
――ワクチンの副反応が心配なんですけど…?というご質問もいただきました。
「風疹麻疹ワクチン(MRワクチン)」というのは、非常に安全性が高いことがわかっていて、注射を刺したところに発赤がおきたり、痛みがあったり、熱をもったり、あと実際に発熱するようなときも十数パーセントくらいあるのはわかっています。ただ「ワクチンを打つリスク」と「ワクチンを打たずに、その病気にかかってしまうリスク」を比べて判断するものであって、ワクチンというのは、うたずに直接かかるよりも、うつほうがいろんな意味で利点が多いということがわかっている、そういう予防法なんですね。
なので、ちょっと発赤があるとか、ちょっと数日熱が出るとか、そういうものよりも、かかって赤ちゃんに障がいがでたり、命の危険があったりすることのほうが何百倍もあぶないので、ワクチンのほうが有効と。完全に安全とは言いませんけど、(MRワクチンは)ワクチンの中でも非常に安全な部類です。お子さんは1歳と小学校入る前に打っているはずです。多くの子どもたちが打っていて、問題は起きていないので、まして大人が打って問題が起こるということはかなり低いと考えられますから、打ってもらいたいと思っています。
――今、産婦人科にお勤めでいらっしゃいますが、先生が接していらっしゃる中での事例をお伺いできますか?
検診に来ている妊婦さんの旦那さんがかかった、ということがこの1か月くらいで2人いるんですよ。他にも、57歳の妊婦さんの実の父親、つまりお腹の赤ちゃんのおじいちゃんがかかってしまい、どうしようという事例もありました。とにかく、「男性」がうたなければどうしようもないんです。もちろん、今から妊娠しようと思っている女性が第一ですけど、この流行を止めるためには男性がどれだけワクチンをうつかということにかかっていますね。おじいちゃんたちも、10000円くらいかかってしまいますが、赤ちゃんのかわいい服を買うくらいならワクチンを打ってほしいですね。
また、現実的には中絶も増えています。可能性があると言われた時点で中絶を選ぶ人がある一定数いて、風疹が流行する年には中絶が増えます。
――今、あらためて自分のパートナーにしっかりワクチンを打ってもらおう、と思っている女性も多いと思います。それを伝えようとしても、いろいろな反応があるかもしれません。「関係ないよ」というように思う方もいらっしゃるかもしれないんですが、太田先生は仕事をする人としての「リスクマネジメント」という意味合いでも対策が必要、と訴えていらっしゃいますよね?
もし風疹にかかったら、1週間くらい出社停止になるわけです。そのこと自体が、責任をもって仕事をしていると言えるのか、というのが一つと、社内で感染が広がって、業務が回りにくくなったというような事例もあったりします。また、同じフロアに妊娠中の女性がいる「かもしれない」し、今から新しくパパになる人もいる「かもしれない」のに、もし自分が風疹にかかって、うつしちゃって、…もし万一ね、そういう障がいをもった赤ちゃんがうまれてしまったときに、「ごめんね」で済ませられるんですか?っていうのもありますね。
まあそこまで言わなくても、企業が新型インフルエンザの流行のときに事業を継続するためにいろんな防護策を出していたんですね。それと同じで、感染症を防いで事業を継続するというリスクマネジメントという面でも、できたら企業の経営者とか、そういうリスク管理を担当している人には、あらためて考えてもらいたいです。そして、社員にワクチンを打って予防をするように勧めてもらいたいと思います。顧客を訪問したときに、感染させてしまった事例もあります。既にYahoo!など一部の企業では社員のワクチン接種に助成金を出したりするところも出てきています。
――経営者には情報提供や可能であれば助成制度、仕事を途中で抜けて接種しに行くことを認めるといった対策をとっていただきたいですね。
そういう意味では打つ「場所」と「時間」が取れないという問題があると思うので、例えばこの西東京の近くでいうと、立川と東中野にある「ナビタスクリニック」はエキナカにあり、夜9時まで診療していて、ワクチンの在庫も比較的豊富にあるようです(在庫状況は変動があるかもしれないので、事前の確認をお勧めします)。夜遅く、21時までやっているので、ビジネスマンにとってもいいんじゃないかと思います。
※ナビタスクリニックは川崎にもあります。
●4/12(金)太田先生より追加情報いただきました●
都内の大手町アビエスクリニックにてMRワクチンを積極的に扱っていらっしゃるそうです。
MRワクチンが10000円弱とのことです。夜7時まで診療(土曜日は午後1時30分まで)です。
東京メトロ大手町駅 C2b出口より直結
03-5224-6636
――それ以外の病院でも、打てる場所は各所にあるので、電話で確認、予約をとったうえで、来院ということですね。もうまさに「待ったなし」ということですので「では来週にでも~」などと先延ばしにせずに、すぐに動いていただいたほうがいいということですね。
はい、接種してから効果が出るまでに2~3週間かかると言われていますので。
――万が一かかってしまったら、どうしたらいいですか?
それはもう、家にこもってもらいたい。家から出るな、ってことですね。この風疹の癖の悪いところは、さっき言ったように症状が軽いので、ぶつぶつが出ていてもマスクで顔を隠して出歩いたりしている人がいるんですよ。治りきってないのに、3日くらいでそこそこ落ち着くみたいで、そうすると出歩くんですよね。感染させるかもしれないのに…。そういうところでもイヤな病気なんですよね。症状が重ければ出られないですけど、軽いんで。
それと、ぶつぶつが出ない人もいるので、感染していることがわからないで出歩いているというケースもあります。とにかく、かかってしまったら、会社にも行かず、家から出ないでもらいたいです。マスクをして。
――では最後に一言お願いします。
未来の赤ちゃん、これからうまれる赤ちゃんが、風疹のために、目が見えないとか、耳が聴こえないとか、心臓に穴があいて手術が必要とか、そういう状況になることを防ぎたいと思います。
予防できるんです。一人もそういう状態でうまれさせないことはできるのに、その手段がもうあるのに、そういう時代になっているのに、まだ今でもうまれているという、そういう状況。それは日本という先進国として一体どうなんだろうか、と本当に思うし、それをもうゼロにしている国もあるんですよね。なので、ぜひ聴いているみなさん、ご家族にワクチンを打ってもらって、そういう赤ちゃんをゼロにしてもらいたいですね。
あと、追加で言うと不妊治療の人でワクチンを打っていないひとがけっこういるんですよ。今から妊娠することがわかっているわけですから、ワクチンを打ちましょう。ワクチンを打った後の避妊期間がいやでワクチンを打たずにいる人もいますが、不妊治療を2か月間中断してでも、大流行している今年はワクチンを先に打った方が良いと思います。顕微受精後に妊娠したのに、夫が風疹にかかってしまい妊娠初期を泣きながら過ごした人もいます。不妊治療でやっと赤ちゃんができたのに、中絶を含むような説明をするのは、もうやりたくありません。
まとめ
●妊娠を考えている女性、将来妊娠する可能性のある女性は必ず対策を
・ワクチンを接種したら、女性は2か月避妊が必要。授乳に関しては問題ない。大流行の今は不妊治療中の人もワクチンを接種し、避妊期間をおいて治療を再開することを勧めます
・妊娠経験のある方は、妊婦検診の「風疹抗体価HI」の数値を確認。「8倍未満」「8倍」「16倍」の方は免疫として不十分
●男性がワクチンを接種しなければ、この流行は止まらない!
・確実にワクチンを2回接種した/または確実に風疹にかかった(視診ではなく血液検査での判定)という履歴のある人以外は対策が必要な人と認識してください。
・免疫をもっている人がさらにワクチン接種をしても無害。まずは検査をして…と時間をかけるより、最初から接種してしまったほうが早く対策でき、費用も節約できる。
・ワクチン接種後、免疫ができるまでの2〜3週間のあいだにかかってしまう人も出ているので、インフルエンザと同じように飛沫感染予防を。
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長文をお読みいただき、ありがとうございました。
ご自身やご家族が対策(ワクチン接種)の必要があるかどうか、ご判断いただけたかと思います。
ぜひ先延ばしにせずに今すぐアクションを起こしていただきたいと願っています。
★補足★
NHKでは「ストップ風疹〜赤ちゃんを守れ〜」というニュース特設サイトが設置されています。
こちらも詳しく分かりやすいですし、随時新しく報道されたニュースへのリンクも追加されています。
また、具体的に生まれた年別に要注意の度合いも記載された情報も参考になりますが、この点について太田先生にお伺いしたところ、「『集団接種が行われていた』とされる時代の方でも、ちゃんと推奨通りにワクチンやっている人ばかりではない」そうです。本文中で57歳男性がかかった事例というのもありましたね。
実際私も中学校のときに学校で女子は集団接種した世代ですが、「小さい頃に風疹にかかりました」と申告して接種していない人がたくさんいたと記憶しています。この「小学校のときに〜」が誤診かもしれない、というのは本文でお読みいただいたとおりです。太田先生は 「怪しい人、不確実な人はワクチンを打つ、というのが基本ですから、年代によって安心しすぎるのはよくありません」とおっしゃっていました。