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産後ケアのNPO法人マドレボニータ オフィシャルブログ

2017年4月19日水曜日

育休中の「取り組む産後ケア」が「よりよい復職」に必要な力をもたらす〜マドレボニータの「社会的インパクトレポート」公開〜

NPO法人マドレボニータは、2016年7月から2017年3月まで実施された内閣府「社会的インパクト評価の実践による人材育成・組織運営力強化調査」に、社会的インパクト評価を自ら実践してみる社会的企業3法人の1つとして参画しました。
このほど、その評価結果がまとまり、「インパクトレポート」として内閣府にて公表されました。今回はその概要をご報告したいと思います。

今回の評価のテーマは「マドレボニータの産後の取り組むケアが『復職』にどのような影響を与えているのか?」


仕事をしている女性にとって、産後は「産育休中」です。妊娠から産後にかけて仕事を辞める人の比率はまだ約6割ですが、徐々に少なくなってきています。育児休業制度が整備され、復職を希望する社員の復職率は100%に近づいている企業もあります。

一方「女性社員の意識や意欲」に悩む企業が約半数にのぼる、育休中の女性側は「育児と仕事の両立」や「復職」への不安を抱える、といった調査結果もあります。企業にお話を伺っていても、課題感は「育休をとって復帰する」ことから「復帰後の働きかたの質」へと移ってきていると感じます。

では「女性が子どもをもってもその人らしく力を発揮して働き続ける」、そのために打てる手はいつから何ができるのでしょうか?
まだまだ「復職後から」と考えられがちなのですが、その手前の「産後」、「産休・育休」の過ごし方が復職後の働き方の土台をつくっていると私たちは現場で多くの産育休中の女性に接し、実感しています。

そこで、今回の評価の目的は、「産育休中の女性がマドレボニータの『産後ケア教室(4回コース)』を受講することで受講後、復職まで、復職後のそれぞれの期間に良い状態、変化が起きていることを明らかにする」としました。そのことにより、「産後ケアは母子保健だけでなく、女性活躍推進の観点からも重要!」ということを示したいと考えました。



社会に「産前」ケアは増えてきましたが、「産後」ケアはまだ少なく、取り組まれるようになっているのも産褥期(産後約6〜8週)のケアが中心です。産後の知識があると行動が変わり、行動が変わればその人のその後の生き方、働き方、パートナーシップが変わります。産後ケアの重要性をより広く知ってもらうためにも、「復職」を切り口に、「取り組む産後ケア」によって生じる効果を測りたいと考えました。

今回の評価プロジェクトでは2016年12月から2017年1月にかけて、育休を経ての復職経験者(受講者538名、非受講者351名)へのWEBアンケート調査とヒアリング(受講者4名とマドレボニータの法人プログラム導入企業2社)を行いました。産後ケア教室の受講者だけでなく、受講されずに復職している方にもアンケートをしたことが今回の大きな特徴です。
 

「産後ケアプログラム」の受講者は、非受講者より「復職」に向けての前向きな気持ちをもつようになった」が約2倍、「パートナーを本当に愛していると実感するようになった」が約3倍多い

前置きが長くなってしまいましたが、いよいよ評価結果のご紹介です!

アンケートの回答を集計したところ、受講後/復職まで/復職後のそれぞれの時点で、復職に良い影響をもたらす変化が引き起こされていることがわかりました!

さらに、受講者で良い変化が起きた人の比率を非受講者と比較すると、38項目中36項目で良い変化をした比率が上回り、32項目で統計的有意差がみられました

例えば…
「『復職』に向けての前向きな気持ちをもつようになった」は約2倍、
「パートナーを『本当に愛している』と実感するようになった」は約3倍多いという結果が出ました!

 項目の一部をご紹介します。
  • 受講後
    • 育児への極度なイライラ感や不安感が解消した:44.3%(非受講者23.5%)
    • パートナーを「本当に愛している」と実感するようになった:58.8%(同19.2%)
    • 「復職」に向けての前向きな気持ちをもつようになった:75.7%(同38.6%)
  • 受講後から復職まで
    • 健康のためや不調の兆しを捉えてのセルフケアを心がけるようになった:92.0%(同 60.6%)
    • 「育休中に復帰後の自分の価値を高めることをしよう」という気持ちになった:77.3%(同 52.6%)
  • 復帰後
    • 限られた時間のなかで、うまく他のメンバーのリソース(時間や能力)も活かしながら、成果を上げることができるようになった:75.2%(同62.5%)
    • パートナーとの協力体制が築けていると感じる:87.0%(同 79.5%)
    ※「変わらない(もともとよい状態だった)」という選択肢を設けた問いはその選択肢の回答者を母数から除いて比率を算出しています


    グラフでもいくつかご覧ください。円の外側が受講者、内側が非受講者です。赤〜ピンクの「よい状態に変化した」の比率の差だけでなく、青系で表示された「変化しないまま」の比率の差もご注目ください。


    このように項目ごとに比較をした結果を、受講後から復職後まで3つの時期にわけて整理したのが、こちらの図です。数字や色分けの見方の詳細は「インパクトレポート」でご紹介していますが、オレンジ色の項目が、特に非受講者との変化の比率の差が大きかった項目となります。


    わかったことをまとめると、こうなります。

    出産後にその人が抱える課題が解決され、社会復帰に向けての意欲と応用可能な力を獲得し、必要なアクションがとれるようになる


    育休初期と後半、復職後では課題も必要なことも変わっていきますが、それぞれで必要な力や変化がもたらされているということがわかりました。
    加えて、「望ましくないままの人を減らす」という「底上げ」のインパクトがあることも強調したい点です。

     また、特に「応用可能な力」については「得られてよかったこと」として受講者へのヒアリングでも挙げる人が多かったです。


    今回既にマドレボニータの法人向けプログラムを導入されている2社、株式会社商船三井さまとソシオネット株式会社さまにもヒアリングをさせていただきました。

    私たちが想定していた導入のメリットや期待を超えた内容もあり、あらためてマドレボニータのプログラムが提供しうる価値について認識する機会ともなりました。アンケート結果や個人ヒアリングの内容と照らし合わせても、「産後ケア教室」がもたらす変化はこれらの企業さまからの期待との相違はないと考えます。 
     

     「産後の取り組むケア」は、母子保健と女性活躍推進のどちらの領域でもインパクトをもたらすことができる

    今回このことが定量的にも明らかにできたと思っています。しかし、現在はまだ母子保健でも「産後ケア」として注目されているのは一部の領域であり、女性活躍推進においてはほとんど注目されていないといってよい状況です。今回明らかになったことを活用して、「取り組む産後ケア」が女性活躍推進においても重要なポイントだということの認知を高めていきたいです。

    また、今回「望ましくない状態のままの人」を減らすことができる点も明らかになりました。このことは、育休中のケアを個人任せにせず、コミュニティ(企業や自治体)全体でケアをすることをお勧めする理由としてしっかり伝えていきたいと思います。

     


    「産後の取り組むケア」を企業の復職支援施策に活用しませんか?

    今回インタビューにご協力いただいた株式会社商船三井さま、ソシオネット株式会社さまに導入いただいている「復職支援プログラム」はこちらにてご紹介しています。お気軽にお問い合わせください。産後ケア教室で実際に復職の準備ができたという個人の方は、ぜひお勤めの企業の担当窓口に導入のご提案をお願いします!


    詳細レポートを内閣府NPOホームページで公開しています。受講者と企業人事インタビューも掲載!

    冒頭でもお知らせしましたように、このページでは評価結果のダイジェストをご紹介しましたが、詳細はインパクトレポートとして公表しております。
    巻末には受講者と導入企業のインタビューもほぼ全文掲載しています。企業の人事・ダイバーシティご担当者の参考にしていただきたいのはもちろん、当事者である産前・産後の方やパートナーが復職を見据えてどう産育休を過ごしたいかを考える際のヒントにもなりますので、ぜひお読みください!

    ▼インパクトレポートの閲覧やダウンロードはこちらから
    内閣府NPOホームページ|社会的インパクト評価の実践による人材育成・組織運営力強化調査